テイラー展開について

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物理数学 #テイラー展開

定義

テイラー展開はある点 x=x0x=x_0 の周りで関数を多項式で近似する方法です。「x=x0x=x_0 の近傍（周り）」を

x=x0+Δxx = x_0 + \Delta x

と表し、f(x0)f(x_0) が分かっているがでは f(x0+Δx)f(x_0 + \Delta x) がどうなのかということを考えます。 関数が十分に滑らか（必要な回数だけ微分可能）であるとすると、

f(x0+Δx)=f(x0)+f′(x0) Δx+f′′(x0)2!(Δx)2+f(3)(x0)3!(Δx)3+⋯+f(n)(x0)n!(Δx)n+Rn(Δx)f(x_0 + \Delta x) = f(x_0) + f'(x_0)\,\Delta x + \frac{f''(x_0)}{2!} (\Delta x)^2 + \frac{f^{(3)}(x_0)}{3!} (\Delta x)^3 + \cdots + \frac{f^{(n)}(x_0)}{n!} (\Delta x)^n + R_n(\Delta x)

として計算できます。二次以降の項を無視すると

f(x0+Δx)≃f(x0)+f′(x0) Δxf(x_0 + \Delta x) \simeq f(x_0) + f'(x_0)\,\Delta x

の形はよく近似式として登場します。

テイラー展開では、「x=x0x=x_0 の近傍」という考え方が鍵です。x0+Δxx0+\Delta x で成り立つときに、じゃあ Δx\Delta x を大きくすれば、 x0x_0 から遠方でもテイラー展開が成立するのか？と混乱しますが、テイラー展開の収束条件（等号が成り立つ条件）についても理解する必要があります。

よく見ると最後に Rn(Δx)R_n(\Delta x) という項がついていると思いますが、これは nn 次項までで打ち切ったときの誤差（余剰項）です。 よく使われるラグランジュの余剰項は

Rn(Δx)=f(n+1)(ξ)(n+1)!(Δx)n+1R_n(\Delta x) = \frac{f^{(n+1)}(\xi)}{(n+1)!} (\Delta x)^{n+1}

という形式で書かれ、ξ\xi は x0x_0 と x0+Δxx_0 + \Delta x のあいだのどこかの値です。そのため、Δx\Delta x を大きく取ってしまうと、 余剰項目も大きくなってしまい、誤差が大きいため

f(x0+Δx)≠f(x0)+f′(x0) Δxf(x_0 + \Delta x) \neq f(x_0) + f'(x_0)\,\Delta x

テイラー展開の近似式が成り立たなくなってしまいます[1]。

別形式

上の式では x0+Δxx_0 + \Delta x と書いていましたが、

x=x0+Δxx = x_0 + \Delta x

と書き直すと、より一般的な「f(x)f(x) のテイラー展開」の形になります：

f(x)=∑n=0∞f(n)(x0)n! (x−x0)nf(x) = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{f^{(n)}(x_0)}{n!}\,(x - x_0)^n

これが「x0x_0 まわりのテイラー展開」です。

収束半径

一般に、べき級数

∑n=0∞an(x−x0)n\sum_{n=0}^{\infty} a_n (x - x_0)^n

について、ある R∈[0,∞]R \in [0, \infty] が存在して、

  • ∣x−x0∣<R|x - x_0| < R なら級数は絶対収束する
  • ∣x−x0∣>R|x - x_0| > R なら級数は発散する

が成り立ち、この RR を収束半径と呼びます。 テイラー展開も形式的には「係数が an=f(n)(x0)/n!a_n = f^{(n)}(x_0)/n! のべき級数」なので、同じ議論がそのまま当てはまります。

脚注

  1. 近傍って何だよ、って思ってた時期がありました。 Δx\Delta x が任意なら f(x=a)f(x=a) の値さえわかればあとは無限に関数を近似できるの？？と混乱したりしていました。 そんなことは無いわけですが。テイラー展開の誤差項や以降で議論する収束半径などの理解が抜けていたわけです。 ↩︎